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岡山地方裁判所 昭和45年(行ク)6号 決定

申立人 林竹正

相手方 岡山市長

主文

本件申立を却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

本件申立の趣旨および理由は別紙記載のとおりである。

よつて審按するに、申立人提出の仮換地と従前の土地の対照図二通、相手方提出の岡山都市計画事業新岡山国道周辺土地区画整理事業事業計画書、同施行規則、換地設計基準、事業概要図、参考図、仮換地調書ならびに疏明の全趣旨によれば、次の事実が疏明される。

相手方は、岡山都市計画事業新岡山国道周辺土地区画整理事業の施行者として、施行規程および事業計画を定め、所定の手続を経て、右国道周辺の交通事情から緊急必要な道路網の完備を重要目的とする該事業を施行中、土地区画整理法第九八条第一項の規定に基づいて仮換地の指定をなす要ありとして、換地設計基準にしたがい、施行地区内に存する土地につき仮換地の指定をすべく、これが案を昭和四四年一〇月二五日に土地区画整理審議会に諮つたうえ、右地区内に存する申立人所有の本件各土地につき、その主張のように各仮換地指定処分をしたが、右案によれば、申立人所有の本件従前の各土地中、岡山市豊成三九〇番の八雑種地、同番の九宅地の二筆の土地を除いては、いずれも当該土地の一部を道路が通ずることになつており、また、右二筆の土地のほか、同所同番の一一田および同番の一田以上四筆の土地を除いては、いずれも当該土地の一部が申立人以外の者の仮換地に指定されている。

以上のとおり疏明される。

申立人は、本案訴訟において、自己に対する仮換地指定の取消を求めているが、その所有にかかる本件従前の土地中、前記疏明の申立人以外の者が仮換地の指定を受けている部分は、当該仮換地処分が取消されることのない限り、申立人としては、たとえ本案訴訟勝訴の判決をえても、これによつて当然右の部分を使用収益しうるというわけにはいかない筋合であるところかかる損害をも行政事件訴訟法第二五条第二項所定の「回復困難な損害」のうちに含ましめるべきであると解するのは相当でないし、また、従前の土地中、前記道路に予定されている部分は、本件申立を認容し申立人がこれを使用収益しうることになればそもそも交通事情から緊急必要とされている道路網の完備を重要目的とする本件事業計画の施行に致命的な蹉跌をきたし、計画の根本的な変更を余儀なくされることになるから、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるといえる。そして、従前の土地中、以上の各部分以外は、申立人がこれを仮換地として使用収益しうるのであるから、この点について申立人は本件仮換地指定処分により、何らの損害を蒙るものではないことは言うまでもない。

以上の次第で、本件申立は、いずれにせよ、これを認容するに必要な積極、消極の要件を欠くものとして却下を免れないから、民訴法八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 裾分一立 米澤敏雄 近藤正昭)

(別紙)

一 申立の趣旨

相手方が昭和四五年二月二日付指定第三三五号、第三一四号、第三一三号、第三一一号、第三〇三号、第二六九号、第三一〇号をもつて申立人に対して発した仮換地の指定処分に基づく執行は、本案判決が確定するまでこれを停止する。

二 申立の理由

(一) 申立人は、土地区画整理法第八九条第一項に該当せず、近隣の者に比し著しく不公平、不合理な取扱いを受けたので、昭和四五年二月七日、岡山県知事加藤武徳に対し、審査請求書、執行停止申立書を提出したが、裁決は現在に至つてもない。

(二) 申立人は、昭和四五年六月六日岡山地方裁判所に対し、右行政処分の取消の訴を提起したが、若しその間処分が執行された場合は申立人の従前の土地に仮換地指定を受けた隣人の訴外人達が、仮換地の場所を基準として売買する。

(三) 売買が現実と実質とが間違つておるので取引後複雑な問題が起り、回復することのできない損害が申立人にこうむること明らかであり、処分の効力を停止する緊急の必要があるのである。

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